少女展爛会シナリオ「塀の上からおちるの、なーんだ?」

Humpty Dumpty sat on a wall.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.

概要

これは少女趣味と人間関係のもつれに耽溺するTRPG少女展爛会用の初期作成PC2〜3人向けシナリオです。
少女展爛会について詳しく知りたい方は少女展爛会(C)SimpleCrafts(こぎつね)をどうぞ。
このシナリオは「ハンプティ・ダンプティ」をモチーフとしたシナリオです。一人の少女が塀の上に登ります。彼女は、今ある関係を変えるために塀の上にたどり着きます。彼女はそこから飛び降りるのか、それとも落ちるのか。いずれにせよ彼女はそれまでの彼女とは何かが決定的に変わることでしょう。塀から落ちれば割れた殻は元に戻ることは無いのですから。そしてそれが、彼女の願いでもあるのです。
このシナリオには二人のNPCが登場します。ハンプティ・ダンプティとその持ち主である”女王”です。”ハンプティ・ダンプティ”は”女王”の元を逃げ出します。そして塀の上に辿り着くのです。
塀の上の”ハンプティ・ダンプティ”を前に、PC達は何を感じ、どうしようとするのでしょうか?
このシナリオはルールブックにて推奨される、ソナタ形式のシナリオです。以下、二人のNPC、提示部、展開部、再現部、コーダとシナリオの内容を記述します。

ハンプティ・ダンプティ” パム

このシナリオにおけるいわゆるヒロイン。
白黒のチェッカー模様のロリータパンクに身を包んだ12才くらいの少女。ふわふわとした色素の薄い栗毛のショートカットに鋭い金の瞳。よく見れば、頭がきれいな卵形をしていることに気づくかもしれません。
彼女は孤高を是とする誇り高い少女です。そして異常な状況をあっさりと受け容れる、独特の感性の持ち主です。もしお化け屋敷に一人取り残されても、彼女は怖いとは思うかもしれませんが取り乱すことは無いでしょう。見た目は人形のように可愛らしいですが、人形に収まるような性格ではありません。
彼女は屋敷に現れてまだ一月足らずの新入りです。お節介なミカに拾われて、彼女の世話になっていました。しかし、べったりと保護者面をしてあれこれと世話を焼いてくるミカに我慢がならなくなり、彼女の元を逃げ出します。

データ
クラス/タイプ/オーデ
ゲイム/人魚姫/ルナティック
世界の部品
貴族趣味/お日様に近い場所/飾らない成果
支配 従順 打算 純真 表現 好意 悪意 先制
4 1 2 5 2 4 2 5 2
特技
孤高/一途/残酷/夢のスープ
アイテム
ロリータパンク[支純]/眼差し(G)[純支]/(キャップ[打純])*1
関係

彼女は対等な関係を求めます。

  • ミカ/庇護/下受

”女王” ミカ(ドミニク)

ウェーブのかかった豊かな髪に、見事なスタイルをした少女、と呼ぶには少々育ちすぎた感のある17才くらいの少女。飾り気のない質素なドレスをまとっていますが、彼女の魅力的な身体に無用な飾りは必要ないと主張するかのようです。首元にファーを巻いています。いつも人当たりのよいニコニコとした笑顔を崩しません。そんな押しの強い笑顔で気がつくと場を取り仕切っているのが彼女の常です。
彼女はそこそこ屋敷に長くいる方で、お節介焼きとして有名です。よく屋敷に現れた新入りを見つけては、自分の住み処に連れ込んで世話を焼き、屋敷の中での生活に必要なあれこれを教えているようです。ですが、それは善意と呼ぶには少々不純かもしれません。彼女にとって拾ってきた少女達はペットなのです。彼女は自分の楽しみのために新入り少女の世話を焼き、そしてその傲慢さを彼女自身自覚しています。
ただ、勘違いしないで欲しいのは嫌がる相手を無理矢理鎖に繋ぐことは彼女の趣味ではないということ。彼女が逃げ出した”ハンプティ・ダンプティ”を追うのは、孤高な彼女が屋敷で独り暮らすにはまだ早いと考えるからです。PC達と会い、彼女は”ハンプティ・ダンプティ”にPC達と関係を結ばせ、自分以外に頼れる相手を手に入れさせようと画策します。

  • 「ミカお姉ちゃん、って呼んでね」
  • 「(抱きしめて相手を胸に埋めつつ)あら、かわいいー」
データ
クラス/タイプ/オーデ
エンプレス/グレーテル/ロマンティック
世界の部品
素敵なお姉様の部屋/導きの手柄/達成の愉悦
支配 従順 打算 純真 表現 好意 悪意 先制
6 1 3 1 5 2 4 3 3
特技
マジェスティ/勇気を出して/傾天の微笑/不可侵
アイテム
ファー[支支]/髪(G)[打支]/胸元(G)[表支]
関係

彼女は相手を「庇護」する関係を求めます。

  • パム/庇護/上攻
  • 他、攻の関係2つ

提示部

*2 昼下がり 庭園

ヒロインである”ハンプティ・ダンプティ”との出会いのシーン。彼女の「ゲイム」らしさをアピールしたいところです。
まずはPC達のならしと関係の確認のため、PC同士で軽く絡みをしてもらいます。とっかかりが難しいかもしれませんが、出来事表の結果がきっかけになってくれるはずです。
ハンプティ・ダンプティがぶつかるPCは適当に選びましょう。例えば「気配に気づくかどうか」判定を行わせ、一番達成値が低いPCとか。
衝突したら、そこから問答無用でショウアップに入りましょう。言いたいことはショウアップの中で、です。

展開部

秋 昼下がり 庭園
  • ハンプティ・ダンプティ”は駆け去り、見えなくなりました。
  • ”女王”が現れ、PC達に声をかけ、少女が一人は知っていかなかったか訪ねます。
  • ”女王”はPC達に、何をしていたのかとか、いろいろと馴れ馴れしく話しかけてきます。
  • PC達が聞けば、あるいは聞くまでもなく”女王”は”ハンプティ・ダンプティ”について名前とか、可愛いらしさとか、逃げられてることとかを話してくれます。
  • ”女王”はPC達を一緒に来ないかと誘ってきます。一人だと連れ戻せる気がしないとか、”ハンプティ・ダンプティ”に紹介するから、とか理由をつけて。
  • 話がまとまって”ハンプティ・ダンプティ”を探すことに決まって、伝えることを伝えてお喋りが弾んできたところでシーンを終了しましょう。

”女王”との出会いのシーンです。”女王”の支配的な態度と二人の関係を印象づけましょう。
”女王”はPC達に積極的にアプローチしてきます。それこそ、ショウアップの中だったら落としに来ているとしか思えない勢いで。そしてPC達の中に入り込んで主導権を取ろうとするでしょう。人当たりのよい態度の中に傲慢さや不実さや不穏さを織り交ぜて、”ハンプティ・ダンプティ”を彼女に任せるのは不安だとPC達に感じさせられれば完璧です。
”女王”は”ハンプティ・ダンプティ”が逃げた理由については誤魔化します。”ハンプティ・ダンプティ”の行き先は分かりません。ミカは訊かれたら「高いところが好きだからそういう所を探してみましょう」とか適当に答えます。

再現部(ショウアップ)

秋 黄昏 廃園 ベランダ・テラス
  • 歩いているうちに、PC達は見覚えのない廃園に出ます。
  • 気がつくと、目の前に高い塀が広がっていることに気づきます。太陽は塀の向こうに隠れようとし、周囲は異様に暗く感じられます。
  • 塀に近づくうちに、塀の上に誰かが腰掛けてPC達を見下ろしていることに気づきます。逆光の暗がりでなお金に輝く瞳。”ハンプティ・ダンプティ”。
  • 塀は高く、高く、手を伸ばしても、飛んでも、跳ねても、肩車しても、届きそうにありません。塀の上に登る手がかり足がかりも見つかりません。「カタストロフ」のオーデを+1します。
  • ショウアップを開始します。

基本的に”ハンプティ・ダンプティ”が塀から飛び降りたらショウアップは終了です。そのラウンドの最後までは続けてもいいでしょう。
ハンプティ・ダンプティ”が飛び降りるのは以下の時です。

陥落させたか、陥落したときは”ハンプティ・ダンプティ”はその相手の腕の中に飛び降ります。相手が彼女を受け止めきれるかどうかは分かりませんが、怪我をするようなことはありません。

コンクルージョン
ハンプティ・ダンプティ
彼女は”女王”との関係を対等なものに変えるために塀の上から飛び降ります。「カタストロフ」のオーデを+1します。コンクルージョンを起こしたオーデが下がった後で「カタストロフ」が「リーディング」であるならば、彼女は頭から落ちて死亡します。そうでなければ彼女は後遺症の残る怪我を負い、意識を失います。ショウアップは即座に終了します。バッドエンドですが、彼女の先制の高さ故に起こることはまず無いでしょう。
”女王”
ハンプティ・ダンプティ”に即座に一回の手番を与えてアプローチを行わせます。その必要が無ければPCの1人と関係を結びます。
行動指針
ハンプティ・ダンプティ
彼女は迷っています。飛び降りていいのかどうか。しかし、彼女は確信してもいます。一度塀の上に上がった以上、飛び降りる以外にないのだと。ハンプティ・ダンプティは塀から落ちて誰にも元に戻せない変化を遂げるのですから。彼女は積極的にアプローチをすることはありません。基本的にアプローチをしてきたPCにアプローチを返します。”女王”の「勇気を出して」を受けたときは「孤高」からの誘い受けを試みるのもよいでしょう。相手にされないときは、サポートを宣言してでも誰かの気を引くべきでしょう。未解放のテンションが10点貯まった状態になったら、彼女は相手を選びます。「一途」+「夢のスープ」+「残酷」で15点を超えるインパクトでもって確実に相手を仕留めましょう。ダイスの神様も彼女の本気に答えてくれるはずです。
”女王”
彼女は”ハンプティ・ダンプティ”をサポートします。まずテンションの低いPCにアプローチをかけて”ハンプティ・ダンプティ”の選択肢を広げます。ついでにスウェイでコンクルージョンを狙っていきましょう。「勇気を出して」は”ハンプティ・ダンプティ”に使ってあげたいところですが、行動順をずらすことでコンクルージョンの争いに利用できることも忘れてはいけません。”ハンプティ・ダンプティ”が陥落しそうなときは、よい関係が結ばれそうなら通しますがそうでなければサポートに入ります。”ハンプティ・ダンプティ”のテンションが足りないときは”ハンプティ・ダンプティ”にアプローチをかけてテンションを補充します。「不可侵」を活かして”ハンプティ・ダンプティ”より先に陥落するような無様は晒さないよう気をつけましょう。いつも笑顔を絶やさぬ彼女ですが、このときばかりはなりふり構わぬ一面を見せてあげるといいでしょう。

コーダ

秋 夜 庭園
  • 日が沈んで、夜の帳がおります。あれほど高く感じられた塀は気がつくと背伸びをすれば上に手が届く高さになっています。カタストロフを(あれば)−1します。*3
  • ハンプティ・ダンプティ”は新たな関係を結ぶことが出来たでしょうか? 新たな関係の形を確認しましょう。もし他にも関係を結んだペアがあればその関係も。
  • PC達に考えがなければ、”女王”は気を利かせて”ハンプティ・ダンプティ”とその相手以外だけを誘ってその場を去ろうとします。
  • ハッピーエンドは幸せに、バッドエンドは悲しく、幕を閉じましょう。

ハンプティ・ダンプティ”はどうして塀の上にいたのか?

なぜ”ハンプティ・ダンプティ”は塀の上にいるのでしょうか? それを知るのは本人だけです。
これは一つの想像ですが、例えばこんな発言をする存在がいたのかもしれません。

  • 「やあ、どうしたんだい? そんなに急いで」
  • 「なるほどね、君は逃げているわけだ」
  • 「なに、違うの?」
  • 「君がもしハンプティ・ダンプティになるというのなら、ここに登ってこないかい?」
  • 「塀から落ちたハンプティは元には戻らない、そう決まっているんだ。だから、ここに来れば君は必ず変わることが出来る」

ショウアップやコーダの中で、話題に上ることがあるかもしれません。屋敷の噂話と絡めたりするのも楽しいでしょう。

ポイント

PCが受け身のヒロインである”ハンプティ・ダンプティ”に興味を持つかどうか。これが一番大切なことです。”女王”はPCに向かって押すことが出来るのでどうとでもなります。PC達には次の2点を感じてもらいましょう。

これで、PC達は二人に関わってくれるはずです。
ハンプティ・ダンプティ”の具体的な演出についてほとんど書いていませんがわざとです。ヒロインは参加者に合わせて変わるべきだと思うからです。
”女王”はお喋りですが、自分のことは喋りたがりません。”ハンプティ・ダンプティ”の魅力を語るか、PCにちょっかいをかけるか、そのどちらかです。
”女王”はGMの味方です。支配と打算に裏打ちされた豊かな表現でもってお節介焼く彼女は、GMの都合で動かしても自然です。困ったら”女王”に頼りましょう。何があってもセッションの手綱を取れるように作ったNPCですから。

*1:懐が足りないため使うことが出来ません。

*2:秋の出来事表で雨が降ることがありますが、このシナリオはずっと屋外が舞台となるのでなかったことにする方が無難でしょう

*3:どのオーデでもなく、中央に戻せばいいでしょう