技術とセンスについて思うところ

久しぶりに頂点の人、わかむらPの最近の作品を見てきました。いやもう、言葉もないです。エフェクトなんて無くたってダンスだけでも十分見られるだろうと思わされるんだから、たまりません。
MADの方も多少は弄っていますが、どうも文章を書く気分なので長文を書きます。
技術がすごいという言葉をよく聞きますが、技術は使うだけならそう難しいことではありません。ここで言う技術はツールとほぼ同義だと思ってください。ただ動画にエフェクトをかけるだけならツールを手に入れてやり方を教われば誰だって出来ます。技術を手に入れるということは作り出せるパターンを増やし、完成度の上限を上げることです。パターンは指数関数的に増えます。分かりやすいところでは自キャプと借り物では作り出せるパターンは万倍違いますし、AEを導入するかどうかでもまた万倍変わるでしょう。しかし実際出来てくる作品は多くの場合そこまでの差を感じさせるほどではありません。借り物Pでも自キャプのP達に負けずに活躍するPはいくらでもいますし、AEは……価格が価格だけに使うPは上手い人ばかりですが、それでもAEの沢山のエフェクトをフルに活用できているようなPはほとんどいないでしょう。
作品を作ることは作り出せるパターンから完成度の高いパターンを選び出すことだとすると、パターンが増えれば増えるほど選び出すことは難しくなります。全体のパターンが増えるほどには完成度の高いパターンは増えないからです。使う技術を増やせば増やすほど当てずっぽうではクオリティが上げられなくなっていきますし、パターンが多すぎてなにが良いのかも分からなくなったりします。そんな中でも最適な組み合わせにたどり着くことが出来るのがセンスなのでしょう。わかむらPはAEを初めとするツールによる越えられない完成度を見せつけてくれる人だと思います。
技術を手に入れたときに動画のクオリティが上がるかどうかは、技術によって膨れあがるパターンの中からより良い組み合わせを見つけ出せるかどうかにかかっています。でも誰もがわかむらPのように出来るわけではありません。それでもその技術を使いたいときにセンスのない人間はどうするか。
もしニコマスに初めからL4Uがあり、765コマンドも用意されていたら今ほど人が集まって発展したでしょうか?
私は怪しいと思います。ボーカロイドセミプロの集まりなのと違ってニコマスはアマチュアの集まりです。少なくともアイマスMADをいくら作っても飯は食えないでしょう。人が創造性を最も発揮するのは作り出せるパターンの量が認識可能な量とほぼ一致するときです。初期のニコマスにあった様々な制約は作り出せるパターンの量を適度に絞っていました。だからそれまでMADを作るどころか見たこともなかったようなアマチュアがPになろうと考えられたのだと思います。
今年の3月に「まっすぐm@ster」という祭りがあったのをご存じですか?
ダンスはまっすぐのみ、エフェクトは「フェード」のみ、DLC不可といったルールでシンプルなMADを作ろうという企画です。エフェクト全盛となった時期に初心に返ろうというスローガンで、再生数としてはそう盛り上がりませんでしたが、作品数は100を超える結構大きな祭りでした。

これが祭りのきっかけとなったりぷPの作品。まっすぐのみで、しかもソロなのに、間違いなく良作。挑戦してみたくなるのも分かる出来です。りぷPにセンスはあると思いますか?
確かにあると思います。りぷPのまっすぐm@ster参加作品を見てもそれはよく分かります。でも仮にりぷPにAEを渡したらそれを使いこなしてくれるかといえば、それはきっと違います。
りぷPはまっすぐm@sterの制限の中で良いものを作る、そんなセンスの持ち主なんだと思います。おそらくPにその自覚があったからその制限を付けたのでしょう。
人にはそのセンスに見合ったキャパシティとでも呼ぶべきものがあります。何か新しい技術を取り入れるときはその分バランスを取って他を制限してやるといった感じで、パターン数がキャパシティに見合うようにフォーマットを決めてやると自分の納得のいく作品を作りやすいかもしれません。使うダンスの曲数を絞るとかは誰でも自然にやっていると思います。
最後に、肝心のキャパシティを伸ばしたいと思うのもまた当然だと思います。それに楽な方法がないことだけは間違いありません。私はいろんなテーマに挑戦することがその一つの方法だと思っています。自分がやりたいと思うテーマは苦手であったとしてもやるべきです。そうやって適度に無理できているときが人間一番伸びるんですから。

余談

あとは自分語りなので適当に。
自分がソロにこだわっているのは、デュオやトリオが扱いきれないと感じているからです。最近デュオは許容範囲かもしれないと思えるようにはなってきました。アイマスでプロデュースするのもどうもソロが好きでデュオやトリオに手を出す気になりません。アイドルはトリオまでなら向き不向きの問題でどれが特に難しいということもないかもしれません。
七夕革命に対しても保守的にやっています。今無理に使おうとすると制作時間が3倍になった上に完成度は別に上がらない気がしています。ここで使いたいと思えたときには挑戦したいです。いつになるか分かりませんが。
正直言えば自分が作っていて楽な方向性とちょこぱいみたいなかわいい系の方向性はかけ離れていると思っています。Imitationみたいなのが作っていて楽。でも苦しくても新しい方向性を開拓するのが楽しくてやめられない。そんなだから埋まるんですけど。
ちょこぱいでお腹いっぱいになったのでかわいい系からしばらく離れますがそのうちまた作ると思います。電波曲は現在ネタ切れなのでまた違った方向性になりそうですが。